精巣がん

① 精巣がんとは

精巣は、男性生殖器のひとつで、陰嚢の内部にある卵型の臓器です。精子を作る働きと男性ホルモンであるテストステロンを分泌する働きがあり、それぞれ違う細胞が担っています。
精巣がんは精巣にできるがんで、悪性腫瘍のことが多いです。その95%は精子を作る精母細胞から発生します。精母細胞は生殖に関係する細胞のため胚細胞とも呼ばれ、精巣がんのほとんどは胚細胞腫瘍ということになります。
精巣がんは、比較的発症率が少なく10万人に1人程度で、日本人は欧米人と比べて少ないのですが、徐々に増加傾向にあります。乳幼児と20~40歳代に発症のピークがあり、白血病などの血液のがんを除き、若い男性に最も多いがんです。
片側の精巣が腫れて大きく硬くなることで気が付きますが、痛みなどが無いため、進行してから気が付くことも多いようです。
化学療法が非常に有効なため、手術で精巣を摘出した後、化学療法を行うと、進行したがんでも70~80%の方は治癒が期待できます。しかし、若い患者さんが多いため、化学療法によって二次的に発生するがん、心疾患、腎機能障害、神経障害などのリスクがあり、長期間の経過観察が必要です。また、手術によって神経を損傷すると勃起不全になることもあります。

② 精巣がんの初期症状

精巣がんの初期症状は、精巣の大きさや硬さの変化です。

・精巣が腫れる
片側の精巣のしこりや腫れで気が付くことが多いでしょう。だんだん腫れて大きく硬くなります。痛みは伴わないことが多いのですが、一時的に精巣に痛みを感じる場合もあります。
・下腹部の症状
下腹部が重く感じる、あるいは鈍い痛みなどが現れます。

③ 精巣がんの主な症状

入浴時や着替えの時に、精巣が大きく硬くなっていることに気が付くのが、最初の症状です。転移すると、転移した場所で、さまざまな症状が現れたり、体重減少などの全身症状も現れます。

・転移が横隔膜よりも下の場合(ステージⅡ)
後腹膜リンパ節に転移しやすい特徴があります。腹痛、腹部のしこり、腰痛などがあらわれます。

・横隔膜よりも上に転移した場合(ステージⅢ)
横隔膜より上のリンパ節や肺、肝臓、脳などに転移した場合、首のリンパ節の腫れ、息切れ、呼吸困難、咳、血痰、頭痛などがあらわれます。全身状態も悪くなります。

④ 精巣がんの種類(病理組織学的分類)

精巣がんは、胚細胞腫瘍と呼ばれる生殖に直接かかわる細胞から発生するがんです。肺細胞腫瘍は、細胞の組織の種類によって、セミノーマ(精上皮種)と非セミノーマに分類されますが、混在している場合もあります。さらに非セミノーマは、腫瘍の元の組織の種類で更に分類されます。
精巣がんの組織を採取して、染色して細胞の形や大きさで判定しますが、セミノーマと非セミノーマでは、増殖や転移の特徴が異なり、治療方法を決める上で非常に重要です。
どのような特徴があるか、紹介します。

⑤ 精巣がんの検査方法の種類(検査期間・予算)

精巣がんの検査方法を紹介します。
・触診
精巣のしこりに触れて確認します。腫瘍の大きさや硬さを、正常な方の精巣と比べると晃気になります。

組織型 特徴
セミノーマ 精上皮種 20~50歳代

(40~50%)

非セミノーマに比べて、化学療法と放射線療法が有効。転移が遅い。
非セミノーマ 胎児性癌 20~30歳代

(約20%)

組織が混在している混合型では非セミノーマに分類して治療を行う。

腫瘍マーカーのAFPが陽性。

化学療法は有効だが、放射線療法の効効果は低い。

早期から広範囲に転移することがある。

転移がみられなくても、リンパ節を切除する場合がある。

卵黄嚢腫

(らんおうのうしゅ)

乳幼児
絨毛癌

(じゅうもうがん)

20~30歳代
奇形種

(きけいしゅ)

乳幼児

・超音波(エコー)検査

精巣が入っている陰のうに、超音波の出る機械を当てて、超音波の反射の様子を画像で観察します。また、カラードプラー超音波検査では、精巣がんの中の血流を観察することができます。
精巣が大きく腫れていても、水がたまっている水腫の場合があり、エコー検査で確認することもできます。
<検査期間> 通常外来で検査し、画像を見ながら結果を聞くことができます。
<検査費用> 診療報酬の点数は、胸腹部エコーが530点、その他が350点となっています。3割負担で、2000円前後と考えられますが、詳しくは医療機関でお尋ねください。

・血液検査

精巣がんには、腫瘍マーカーがあり、精巣がんの診断にとても有用です。主な精巣がんの腫瘍マーカーは、AFP(αフェトプロテイン)、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)、hCG-β、LDH(乳酸脱水素酵素)などです。セミノーマおよび非セミノーマの各組織型で、検出される腫瘍マーカーが異なります。
また、これらの腫瘍マーカーは、他の病気でも数値が上昇することがあるので、他の検査の結果と合わせて診断に使用します。

<検査期間>血液検査の結果のため、各施設によって異なります。
<検査費用> 腫瘍マーカーの検査の診療報酬点数は、悪性腫瘍の患者であることが疑われる場合の検査として、算定されます。腫瘍マーカーの項目数に応じて異なりますが、230点(2項目)~420点(4項目以上)とされ、3割負担で800円~1500円程度かかると考えましょう。

・組織検査

精巣がんでは、手術で精巣摘除術を行い摘出した精巣から組織を採取して生検を行います。検査の段階では、転移を招く可能性があるため生検は行いません。

⑥ セルフチェックとリスクファクター

普段から、異常が無いか気を付けるようにしましょう。特に精巣がんを発症するリスクの高い方では注意するようにしましょう。

・セルフチェック

精巣がんの発症が多い20~40代の方は、入浴時に、自分で触れてみることで、早期に異常が発見される場合があります。
乳幼児の場合にも、おむつ替えの時や入浴時に、異常が無いか気を付けるようにすると良いでしょう。

・精巣がんのリスクファクター

精巣がんのリスクファクターとして、家族歴があります。精巣がんを発症するリスクは、父親が精巣がんの場合4倍、兄弟の場合には8~10倍と言われています。
停留精巣と言って、精巣がお腹の中などにあり陰嚢内にないことを言います。停留精巣もリスクファクターのひとつです。そのほか、反対側の精巣がんを患ったことのある方や不妊症の方は、定期的な検査が必要です。

⑦精巣がんの病期(ステージ)分類と生存率

・精巣がんの病期分類
病気(ステージ)は、がんがどのぐらい進行しているかを表しており、術後の治療方針を決めたり、術後の回復の目安を予測するために、非常に重要です。
精巣がんのステージは、精巣がんの大きさ、リンパ節や周辺の組織や他の臓器への転移があるか否かで3期に分類します。大きく分けると、Ⅰ期は転移なし、Ⅱ期は横隔膜より下のリンパ節に転移あり、Ⅲ期は遠隔転移に分類されます(表)。
術後の治療方法の選択には、さらに、セミノーマか非セミノーマかという病理学的な分類も合わせて検討します。

(表)精巣がんの病期分類と生存率

病期 進行のようす 5年生存率
セミノーマ 非セミノーマ
I期 転移なし 100% 97.7%*
II期 横隔膜より下のリンパ節に転移あり 100% 94.2%
IIA 後腹膜転移巣が5cm未満
IIB 後腹膜転移巣が5cm以上
III期 遠隔転移 75% 63%
III0 腫瘍マーカーが陽性であるが、転移巣不明
IIIA 横隔膜より上のリンパ節に転移あり
IIIB 肺に転移
B1 片側の肺の転移が4個以下かつ2cm未満
B2 片側の肺の転移が5個以上または2cm以上
IIIC 肺以外の臓器にも転移あり

病期分類:日本泌尿器学会 日本病理学会編
生存率:新潟県立がんセンター新潟病院における1980年以降に治療した症例、*:術後3年間放置例1例が死亡

⑧ 精巣がんの早期発見メリット

精巣が腫れていることに気が付き、超音波検査で精巣がんが疑われた時点で、治療と組織学的な検査(生検)を兼ねて、高位精巣摘除術(こういせいそうてきじょじゅつ)を行います。
術後に転移の有無で分類した病期と、生検でセミノーマか、非セミノーマか診断されれば、その後の治療方針が決定されます。
早期に発見されて転移のないセミノーマであれば術後経過観察となります。非セミノーマであっても転移が無い場合には術後経過観察あるいは、リンパ節廓清や化学療法を行います。
精巣がんは、放射線療法や化学療法の効果が高く、比較的治癒が期待できるがんのひとつですが、増殖のスピードが速く転移しやすい非セミノーマでは、治療が難しい場合もあります。
若い男性に多いがんですので、少しでも早くがんを発見し治療を開始することが、これからの長い人生のためにとても重要です。

⑨ がんリスク評価(まも~るくん)

精巣がんは若い男性に多く、がんを患うという認識がない時に発症する可能性があります。精巣がんは進行や転移が早く、早期発見が治療の決め手となります。まもーるくんでは、症状が出る前に、がんのリスクが上昇したことを知らせてくれる検査が可能ですので、超早期から詳しい検査に進むこともできます。

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