骨転移

① 骨転移

骨転移は、がんの進行に伴って、がん細胞が主に血流にのって骨にたどり着き、骨で増殖して骨を破壊することです。原発腫瘍のがん細胞が骨に拡がったのではありません。身体の中心部の骨に転移しやすく、腰椎、胸椎、頸椎、骨盤内にある仙骨への転移が多いことがわかっています。また、多発性に骨転移がみられる場合も少なくありません。
すべてのがんで、骨転移の可能性はあります。がんの種類別の骨転移頻度は明らかになっていませんが、四国がんセンターの1959~1997年のデータでは、乳がんと前立腺がんでは約75%、肺がんと甲状腺がんでは約50%に骨転移がみられたという報告があり、骨転移しやすいがんと言えます。一方、消化器のがんは20%前後で比較的骨転移しにくいようですが、胃がん患者数の多さを考慮すると、全体として骨転移の患者数は多いと考えられます。
骨転移した部位では、骨の線維化、壊死、骨のようなものが出来る類骨形成などの変化が起こり、骨折しやすいことが特徴です。また、骨の造血機能に変化が起こることがわかっています。
骨転移があっても無症状のことが多いのですが、痛みや骨折が一般的な症状で、症状で発見されることも少なくありません。
進行がんでは、高い確率で骨転移を合併します。骨転移は痛みを伴い、骨折すると日常生活の質が著しく低下します。がんの治療の進歩により、長期生存の可能性が高く、高齢のがん患者の方も多くいるため、がん患者における骨転移の治療は重要な課題でした。
がん細胞が骨転移を起こすメカニズムが明らかになってきたことから、骨転移の薬物治療もおこなわれるようになってきました。骨転移のメカニズムと骨転移の治療について紹介します。

②骨転移の主な症状

骨転移があっても無症状のことが多いのですが、骨転移が進むと症状が現れてきます。
・痛み
骨転移したがん細胞によって、神経が刺激されて痛みが起こります。

・骨折
骨は骨の形成と破壊がバランスよく繰り返されて、常に新しく生まれ変わっています。骨転移があると、このバランスが崩れて骨の破壊が進むことで、骨折しやすくなります。また、骨の成分を取り込んで、がん細胞は更に増殖して、骨破壊が進みます。

・手足のしびれ、麻痺
背骨の中には脊髄と言って神経の束が通っています。脊髄は手足など全身の神経に分かれていきます。頸椎、胸椎、腰椎といった背骨に骨転移が起こると、脊髄が圧迫されて、脊髄の支配下にある手足の筋力が衰えたり、しびれが出たり、麻痺が起きたりします。

・高カルシウム血症
骨転移があると、骨の破壊が進み骨の成分であるカルシウムが血液中に溶け出し、高カルシウム血症になります。高カルシウム血症になると、悪心・嘔吐、食欲不振、便秘、疲労感など、さまざまな症状が現れます。

③骨転移のメカニズム

正常な骨は、常に新しく生まれ変わるために、古い骨を溶かす破骨細胞と、骨を作る骨芽細胞がバランスよく働いて、骨を作っています。破骨細胞の働きを「骨吸収」といい、骨芽細胞の働きを「骨形成」と言います。
骨転移したがん細胞は、骨で増殖するために、破骨細胞の骨吸収を促進させ、バランスを崩して骨を破壊していきますが、そのメカニズムが明らかになってきました。

①骨転移したがん細胞はパラサイロイドホルモン関連タンパク(PTHrP)という物質を作ります。
②PTHrPが、骨芽細胞を刺激すると骨芽細胞にRANKが出現します。
③血液造血幹細胞から作られた前破骨細胞とRANKが結合すると、前破骨細胞が成熟して破骨細胞に分化して数が増えます。
④破骨細胞によって骨が破壊さ(骨吸収)れると、骨からIGF、TGF-β、EGFといった成長因子が放出されます。
⑤これらの成長因子は、がん細胞が増殖する成分でもあり、骨転移したがん細胞は増殖します。また、成長因子は、がん細胞を刺激して、また①へ戻るという悪循環がまわり、骨の破壊が進むことがわかってきました。

④ 骨転移の検査方法の種類

今回は骨転移の検査方法を紹介します。

・血液検査・尿検査
進行がんの患者さんで骨転移があっても、初期には27~60%が無症状と言われています。骨吸収が進んでいると血液中のカルシウム値が高くなるため、血液検査を行います。また、骨代謝マーカーといって、骨形成性のマーカーと骨吸収性のマーカーがわかっています。骨転移では血液中と尿中の骨代謝マーカーの値が高くなります。骨代謝マーカーは治療の効果を調べるためにも測定されます。
<検査期間> 採血または採尿して結果を待ちます。結果が出るまでの期間は施設によって異なります。
<検査費用> 血液検査は項目数によって診療報酬点数は変わってきます。

・画像診断(X線撮影、CT検査)
X線画像では、骨転移した場所の形態がどのような状態であるかを調べます。破骨細胞で破壊が進んだ部分にはがん細胞が増殖しますが、原発のがんの種類によっては増殖速度が遅いため、破壊された骨の部分は骨芽細胞によって骨が出来ることがあり、がんの種類によって、画像所見に違いがあります。
CT画像では、骨転移の拡がりや骨破壊の状態がわかります。MRIは検出感度が高いため、初期の転移を検出できます。
<検査期間> 外来で行います。検査の結果は、当日または後日医師から説明があります。
<検査費用> 診療報酬は、装置や施設により異なりますが、CT撮影が1,000点前後、MRI撮影が1,600点前後ですので、3割負担で3000~5000円となります。

・核医学検査:骨シンチグラフィー
骨に集まりやすい性質をもった放射性医薬品を注射し2~3時間後、全身に医薬品が行き渡った頃に放出されるガンマ線を測定すると、がんの骨転移や外傷、骨折など、さまざまな骨の状態を観察することができます。
<検査期間>注射や全身に行き渡るまでの時間を除き、撮影時間は約30分程度です。
<検査費用>核医学診断料も含めて、3割負担で17000円前後になります。

⑤ 骨転移の治療

骨転移に対する治療は、原発腫瘍の治療と併行して、骨転移の症状に対する治療と、骨吸収が進まないようにする治療が行われます。
骨転移の症状に対する治療は、主に痛みを和らげる治療が行われます。手術、放射線療法と、鎮痛薬による緩和療法が行われます
骨吸収が進まないようにする治療は、骨吸収抑制剤による薬物療法です。

・骨転移に対する手術
骨転移の部分を切除して、人工骨に置き換えたり、脊椎の圧迫骨折ではセメントを流し込む手術や脊椎再建術が行われます。

・放射線療法
骨転移した場所で増殖したがん細胞に放射線をあてることで、がん細胞が消失し、周囲の神経への刺激がおさまり痛みが軽減されます。また、骨転移したがん細胞を減らすため、骨折や脊髄圧迫を予防します。手術と比較して、身体の負担が小さい治療法です。

・化学療法・ホルモン療法
原発のがんの治療に効果のある化学療法やホルモン療法は、転移先の効果も期待して全身状態が良好な患者さんでは、行われることがあります。

・骨吸収を抑制する薬物療法
骨吸収を抑制する薬剤として、現在使用できるのは、ビスフォスフォネート製剤と、抗RANKL抗体のデノスマブです。
ビスフォスフォネート製剤は、破骨細胞の骨吸収を抑える作用と、破骨細胞を破壊する作用があります。1年間の投与で、平均6~7%骨量が増えたという報告があります。副作用として、顎の骨壊死や腎障害、発熱、低カルシウム血症があるので、継続的な観察が必要です。

デノスマブは、ヒト型IgG2モノクローナル抗体というものです。前述のがん細胞が骨吸収を促進するメカニズムにおいて、RANKLの働きを抑えて、破骨細胞によって骨吸収が進まないようにする薬です。骨の破壊が抑えられることで、骨転移したがん細胞の増殖も進行しないと考えらえています。その結果、痛みを抑える効果もあると考えられています。ビスフォスフォネート製剤と同様、低カルシウム血症、顎の骨の壊死の副作用が報告されています。

・鎮痛薬による緩和療法
鎮痛効果のある薬剤を段階的に使用し、痛みを和らげ、少しでも日常生活を楽に過ごすことが出来るようにするのが緩和療法です。
弱い痛みには、一般的は鎮痛・解熱。抗炎症作用のある非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を使用します。痛みの強さに合わせて、麻薬性の鎮痛薬(オピオイド)を使用します。安静にしていても痛いのか、また動くことで痛みが強くなるのか、眠気などの副作用も考慮して選択します。
飲み薬だけでなく、貼り薬や坐薬、注射薬など剤型も豊富になり、患者さんの状態と好みに合わせて、選択肢が広がっています。

⑥ 早期発見メリット

2人に1人はがんにかかる時代と言われ、がんの治療方法が進み、がんを治療しながら共生する時代です。どのようながんの種類でも、骨転移の可能性はあります。骨転移の治療が進み、痛みや骨転移の進行を止める方法も進んできました。とは言え、やはりがんは早期発見、早期治療することで、回復が期待されます。がんの症状に気を付けて、気になる症状があれば受診することが重要です。

⑦ がんリスク評価(まも~るくん)

まもーるくんでは、尿検査や血液による遺伝子検査などで、他の検査では発見できない段階で、がんのリスクを評価します。がんのリスクが指摘されれば、更に詳しい検査に進むこともできます。

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