後腹膜腫瘍

①後腹膜腫瘍とは

後腹膜とは、上側は横隔膜、下側は骨盤隔膜、脇は腰椎の両側の腰方形筋(ようほうけいきん)で形作られたスペースのことを言い、胃や腸などの消化器がおさまっている腹膜の外側になります。腹部にあるその他の腎臓や尿管、膀胱の他、背中側あるに大動脈と大静脈を含めて後腹膜臓器と呼ばれます。
後腹膜腫瘍は、後腹膜にできた腫瘍の総称で、ひとつの腫瘍ではありません。また、後腹膜以外の、腹膜におさまっている臓器や後腹膜臓器に発生した腫瘍も後腹膜腫瘍には含まれません。
後腹膜腫瘍は、腹腔にある筋肉や脂肪などの組織から発生した腫瘍です。こうした、筋肉、脂肪、血管、リンパ管、神経などを軟部組織と言い、軟部組織から発生した腫瘍を軟部腫瘍と言います。軟部腫瘍は、通常手や足、胴体など様々な部位に発生しますが、後腹膜腫瘍は軟部腫瘍が後腹膜にできたものと考えると良いでしょう。
後腹膜腫瘍は、多くの組織型に分類され、その組織型から良性腫瘍と悪性腫瘍に分類されます。筋肉の組織から発生する肉腫は悪性腫瘍で、中でも脂肪肉腫が最も多い組織型です。また、良性腫瘍では脂肪腫が最も多いことが報告されています。
2008年の全国骨・軟部腫瘍登録に登録された軟部肉腫3,708例のうち、良性が70.4%、悪性が29.6%でした。後腹膜に軟部腫瘍が発症する割合は低く、さらに悪性の後腹膜腫瘍は、全悪性腫瘍の0.2~3%程度と言われており、非常に稀な病気であると言えます。

② 後腹膜腫瘍の初期症状

後腹膜腫瘍の初期症状はほとんどありません。腹部が大きくなって、周辺の臓器が圧迫されて痛みなどの症状が現れて受診することが多いようです。

③ 後腹膜腫瘍の主な症状

・腹痛や吐き気などの消化器症状
後腹膜腫瘍が大きくなると、周囲の腹腔内の臓器を圧迫し、消化器症状が現れるようになります。

・足の痛み、歩行障害
腫瘍が大きくなって、脊椎の横の腸腰筋に拡がってくると下肢の神経が影響を受けて、足の痛みや、歩行障害などが起こります。

・周囲の臓器への癒着
後腹膜腫瘍が悪性の場合は、周辺の組織や臓器に転移している可能性が高くなります。また組織型が深く拡がるタイプの場合には、周囲の臓器と癒着が強いことが多く、腫瘍と合わせて周辺の臓器も摘出することになります。

④ 後腹膜腫瘍の組織学的分類

後腹膜腫瘍は、軟部腫瘍であり、筋肉、脂肪、骨や神経など発生源である組織が多いため、腫瘍組織も多くの組織型に分類されます。組織型により、悪性腫瘍と良性腫瘍に分けられます。
後腹膜腫瘍の治療には、組織型で分類される腫瘍の種類、悪性度などによって異なるため、治療の前に、十分検査をして診断を確定させる必要があります。

悪性・良性 組織型
悪性腫瘍 神経芽細胞種、悪性リンパ腫
脂肪肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、細網細胞肉腫、線維肉腫

血管肉腫、円形細胞肉腫、紡錘細胞肉腫、多形肉腫、巨細胞肉腫

混合肉腫、神経肉腫、内皮肉腫、分類不能肉腫、

胚細胞線維腫
悪性奇形腫
良性腫瘍 脂肪腫、血管平滑筋腫、血管腫、神経鞘腫、軟部軟骨腫、嚢腫

⑤ 後腹膜腫瘍の検査方法の種類(検査期間・予算 )

今回は後腹膜腫瘍の検査方法を紹介します。期間なども合わせてみてください。後腹膜にある腫瘍が、何から発生したどんな腫瘍であるかを、各種検査によって調べていきます。
・超音波(エコー)検査
腹部に超音波の出る機械をあて、超音波の反射を映像で観察します。被ばくも無く、身体に負担が少ない検査で、腫瘍の有無をスクリーニングします。カラードプラーを用いると、腫瘍の血流や臓器の動きを観察することができます。
<検査期間> 外来で行われ、画像を見ながら説明を聞くことができます。
<検査費用> 胸腹部の超音波検査の診療報酬点数は530点です。3割負担で1590円となります。

・CT検査
身体の断面をX線を使って撮影する検査で、腫瘍の存在を確認することができます。脂肪成分を含む脂肪肉腫など、腫瘍内の性状を観察することができます。造影剤を静脈に注入して撮影する造影CTでは、腫瘍と血管野位置関係や、腫瘍の血流、腫瘍が血管に拡がっていないかなどを観察することが出来ます。
また、後腹膜腫瘍が悪性の軟部肉腫の場合には、肺に転移することが多いため、胸部CTを撮影します。
<検査期間>外来で行います。検査の結果は、後日医師から説明があります。
<検査費用>診療報酬は、装置や施設により異なりますが、CT撮影が1,000点前後ですので3割負担では3000~4000円程度です。造影剤を使用した場合は、薬剤費が追加となります。詳しくは、医療機関でお尋ねください。

・MRI検査
MRI検査は、被爆がなく検出能力が高く、がんの拡がり方や深達度などを調べるのに適しています。
<検査期間>外来で行います。検査の結果は、後日医師から説明があります。
<検査費用>診療報酬は、装置や施設により異なります。

・組織・細胞診(生検)
後腹膜腫瘍が疑われた場合、腫瘍に針を刺したり、吸引して細胞や組織を採取し、顕微鏡でがん細胞があるか、またどのような組織型であるかを調べます。
後腹膜腫瘍は、頻度が少ない上にさまざまな腫瘍の形態があり、病理組織学的検査は、診断と病期分類、治療の選択のために非常に重要な検査です。
<検査期間> 外来でサンプルを採取して、顕微鏡による検査が行われます。組織検査には染色が行われ、結果が出るまでの日数は施設によって異なります。
<検査費用> 各診療報酬点数は、皮膚を切開して組織のサンプルを採取する場合は500点ですが、手技によって異なる場合があります。詳しくは、医療機関でお尋ねください。

⑥ 後腹膜腫瘍の病期(ステージ)分類

後腹膜腫瘍は、骨軟部腫瘍ガイドラインで紹介されている病期分類では、TNM分類と組織学的悪性度(Grade1~3)を基準に分類しています。American Joint committee on Cancer(AJCC:米国がん合同委員会)と、Union for International Cancer Control(UICC:国際対がん連合)では、組織学的悪性度の分類や腫瘍の深さの判断が異なります。
TNM分類のT分類は腫瘍のサイズと深さ、N分類はリンパ節転移の有無、M分類は遠隔転移の有無で判定されます。
American Joint Committee on Cancer system(AJCC)*第7版による病期分類

T1は腫瘍サイズが5cm以下、T2は腫瘍サイズが5cmより大きい、aは浅在性、bは深在性

病期 腫瘍のサイズと深度** リンパ節転移 遠隔転移 組織学的悪性度
ⅠA T1a, T1b N0 M0 Grade 1
ⅠB T2a, T2b N0 M0 Grade 1
ⅡA T1a, T1b N0 M0 Grade 2, 3
ⅡB T2a, T2b N0 M0 Grade 2
T2a, T2b N0 M0 Grade 3
Any T N1 M0 Any Grade
Any T Any N M1 Any Grade

*カポジ肉腫、デスモイド、先天性線維肉腫は除く
Any Grade:悪性度に関わらない

Union for International Cancer Control(UICC:国際対がん連合)第7版*による病期分類
T1は腫瘍サイズが5cm以下、T2は腫瘍サイズが5cmより大きい、aは浅在性、bは深在性

病期 腫瘍のサイズと深度** リンパ節転移 遠隔転移 組織学的悪性度
ⅠA T1a, T1b N0 M0 低悪性度
ⅠB T2a, T2b N0 M0 低悪性度
ⅡA T1a, T1b N0 M0 高悪性度
ⅡB T2a N0 M0 高悪性度
T2b N0 M0 高悪性度
Any T N1 M0 Any Grade
Any T Any N M1 Any Grade

*カポジ肉腫、皮膚線維肉腫、線維腫症、血管肉腫、さらに硬膜、脳、管腔(かんくう)臓器、または実質臓器(乳腺肉腫を除く)から発生した肉腫は除く
Any Grade:悪性度に関わらない

⑦後腹膜腫瘍の回復の見込み(予後)を予測する因子

軟部肉腫の予後を予測する因子を紹介します。

・遠隔転移やリンパ節転移
前述の病期(ステージ)分類においても、リンパ節転移や遠隔転移があると、ステージⅣということになります。ステージⅣでは、標準治療は確立されていないため、個々の病状に合わせて手術や化学療法、放射線治療を組み合わせて行いますが、転移が無い場合と比べて、非常に予後が悪いことが分かっています。

・腫瘍の発生部位
後腹膜腫瘍は、軟部腫瘍が後腹膜にできたものですが、手足にできた軟部腫瘍より、手足以外の、後腹膜や腹腔内、胸壁、体幹などにできた軟部腫瘍のほうが、予後が悪いと言われています。

・腫瘍の大きさ、深さ
腫瘍の大きさが、5cm未満と比較して、10㎝を超える場合や、深い部分に出来る腫瘍は、予後不良です。

・腫瘍の悪性度
悪性度は、Grade1~3に分類されますが、悪性度が高いほど予後不良です。

⑧ 早期発見メリット

後腹膜腫瘍の標準治療は、手術による腫瘍の切除ですが、腫瘍が大きくなるとリンパ節や周辺の臓器に転移するようになり、腫瘍よりも大きく周辺の臓器や血管なども含めて切除することになります。また転移が無い場合でも、癒着がある場合には、癒着した臓器を一緒に摘出しなければならなくなります。
早期に発見できれば、腫瘍の大きさも小さく、身体に少しでも負担の小さい方法で治療することができます。

⑨ がんリスク評価(まも~るくん)

後腹膜腫瘍は、発症の頻度が少なく早期では症状がないことから、診断が遅れる可能性があります。悪性腫瘍の場合には進行すると転移の可能性があり、何よりも早期発見が重要です。
まもーるくんでは、尿検査や血液検査で、早期からがんの可能性を発見できる検査が用意されています。また、個別で医療相談などもできる体制が整っているため、異常に気が付いた時に相談することもできます。

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